医学生Gの数学ノート

スキマ時間で読める数学の記事を数学塾講師経験のあるメンバーがお届けします!

#9 因数分解の基礎 part1

 今回の記事では因数分解のコツをお伝えしようと思います。入試問題になってくると#8の記事で説明した計算と今回の記事で説明する因数分解は出来て当たり前になってきますので、まず基本的なことである1)2)をしっかりと理解してくださいね。

 

1)展開の逆をせよ!

 

(整数の積)=(単項式の和) のとき、例えば(x+2)(2x-1)=2x^2+3x-2

(左辺)→(右辺)の変形を"展開"、

逆に、(右辺)→(左辺)の変形を"因数分解"といいます。

 

 つまり、因数分解とは展開の逆の操作であり、基本的にこれまでの展開公式を逆方向に使えばいいのです。

 

例)a^2+2ab+b^2={(a+b)}^2

  a^2-b^2=(a+b)(a-b)

 

因数分解がどんなものなのか理解できましたでしょうか。

 

2)因数分解の基本的な手順

  因数分解は基本的に次のような手順でするといいと思います。

 \begin{cases}①実は公式そのまんまじゃないかチェック\\②共通因数をくくり出す\\③グループ化\\④降べきの順に並べる\\⑤たすき掛けor展開公式の逆\end{cases}\ 

 

①〜⑤を 4zy-30z-4zx+2z{(x-y)}^2 を例に使って説明していきます。

 

①実は公式そのまんまじゃないかチェック

4zy-30z-4zx+2z{(x-y)}^2←これは違いますね。

 *  a^2+4ab+4b^2  などは公式がそのまま使えるので一撃でいきます。

 

②共通因数をくくり出す

共通因数"2z"がありますのでくくり出します。

4zy-30z-4zx+2z{(x-y)}^2=2z \{2y-15-2x+{(x-y)}^2\}

 

③グループ化

 {  }の中の2y-2xを-2でくくると(x-y)が出てきますね。これで{  }の中は\underline{(x-y)}でグループ化できているのがわかりますでしょうか。

2z\{2y-15-2x+{(x-y)}^2\}=2z\{-2\underline{(x-y)}-15+{\underline{(x-y)}}^2\}

 

④降べきの順に並べる

 ③の過程で{  }の中がグループ化できましたので、今度はグループ化した(x-y)についての降べきの順に並べましょう。

 

2z\{{\underline{(x-y)}}^2-2\underline{(x-y)}-15\}

 

⑤たすき掛けor展開公式の逆

 {  }の中は因数分解できますか?

かけて-15、足して-2の組み合わせです。-53がありますね。これで{  }の中を因数分解してみましょう。

2z\{{(x-y)}^2-2(x-y)-15\}=2z\{(x-y)-5\}\{(x-y)+3\}

 

 もしわかりにくかったら(x-y)=Aなどと置いてみるといいと思います。

(x-y)=Aとすると

2z\{{(x-y)}^2-2(x-y)-15\}

=2z\{A^2-2A-15\}

=2z\{A-5\}\{A+3\}

=2z\{(x-y)-5\}\{(x-y)+3\}    

*Aは自分が勝手においた文字ですので最後は元に戻しましょう。

 

①〜⑤をまとめるとこんな感じです。

4zy-30z-4zx+2z{(x-y)}^2

=2z \{2y-15-2x+{(x-y)}^2\}

=2z\{-2\underline{(x-y)}-15+{\underline{(x-y)}}^2\}

=2z\{{\underline{(x-y)}}^2-2\underline{(x-y)}-15\}

=2z\{(x-y)-5\}\{(x-y)+3\}

 

 

 式の次数が高いと、公式など種々のテクニックが使いにくくなることが多いですので、文字の種類が複数ある場合は数の低い文字について整理してみるといいと思います。難しい式になると、①から⑤のサイクルを何度かくり返して解くこともあります。

 

ここで1つポイントを述べておきますが、

④降べきの順に並べる」を甘くみてはいけません。

その後公式を使ったり、たすき掛けをしたりすることになると思います。公式は普通降べきの順に並んだ形で覚えるでしょうし、たすき掛けも、2次→1次→定数項 と降べきの順に並べてから行うのが一般的です。だから、降べきの順に並び替えるということは、⑤たすき掛けor展開公式の逆  を正確に行うために必須の準備と言えます。

 

 

 今回は因数分解の基本的なやり方を説明しました。次回は難しい因数分解の対処法について説明していきますので、この記事を理解してもらって次回も読んでもらえると嬉しいです。

#8 演算基礎

 今回は高校レベルの数式を扱うに当あたっての基本的なポイントをいくつか紹介したいと思います。

超初心者向けに丁寧に書きましたので、計算ミスが目立つ人や計算が遅いな〜と思う人はぜひ参考にしてみてください。

 

1)指数法則

x^a×x^b=x^{a+b}       xが合わせて何回かけられているかな? 

今回の場合はa+b回かけられていますので、x^{a+b}になりますよね。2が3回かけられていたら2^3になるのと同じです。

 例)2^3×2^4=2^{3+4}=2^7    今回は2が合計で7回かけられていますので2^7になります。 

 

{(x^a)}^b=x^{ab}    これは\underbrace{x^a×x^a×{\cdots}×x^a}_{x^aがb個}となっているためx^aがb回かけられていますよね。よって①を利用するとx^{\overbrace{a+a+{\cdots}+a}^{b個}}で、ab個あるのでx^{ab}になります。

例) {(2^3)}^4=2^{\overbrace{3+3+3+3}^{4個}}=2^{3×4}=2^{12}

 

 

2)定数項は0次式

xが1回もかけられていない項→xが0回かけられた項→0次!

つまり、定数項(ただの数字)は、降べきの順では一番最後に書きましょう。

 

例)x^2+3x+\underbrace{2}_{定数項}  

このようにx降べきの順にした時は定数項は最後!

 

 

 

3)降べきの順(次数が高い順)に並べ、同類項ごとに計算する

例えばこんな式でみていきましょう。

 

例) 3x+7-2x^2+5x^2-10-7x

     (5-2)x^2+(3-7)x+(7-10)     同類項にまとめる

     3x^2-4x-3               まとめた後に計算する

 

 降べきの順(xの2次→1次→0次)にすると、因数分解の時にわかりやすいです

 

 

4)変数、定数の区別

例)7xy^2はxについての何次式で、係数は何ですか?

    答)1次式で、係数は7y^2です。

 

まず、変数について考えていきましょう。今回の質問はxについて問いかけました。"xについて"ということはxを変数、つまり全体として"xについての問題"として考えるということです。

この場合は残りの7y^2のことを係数と呼び、、yは7などただの数字と同じものとして考えます。この考え方は、他変数関数の最大値・最小値を求める時などに非常に大切になってきますので、ぜひ覚えておきましょう。

*多変数関数 例)f(x,y)=x^2+y^2-3x+5みたいなヤツ。

  xyなど、複数の変数が入った式のことです。

 

それでは問題です。

7xy^2はyについての何次式で、係数は何ですか?

       答)2次式で、係数は7xです。   もう大丈夫ですよね(笑)。

 

 

 

5)グループ化   (*正式な用語ではないです ご注意を! )

 式の中で部分的に、同じ数式が現れた時に、それ全体を1つの文字のように扱うことによって見通しが良くなります。それでは例をみていきましょう。

 

例)(x-y+z)(2+y-x)=\{(x-y)+z \}\{2-(x-y)\}      

  ↑同じような数式(x-y)を1つの文字のように扱う

  (x-y+z)(2+y-x)

       =\{(x-y)+z \}\{2-(x-y)\} 

  =-\{(x-y)+z \}\{(x-y)-2\}   ーを外に出し、展開しましょう

       =-(x-y)^2+(2-z)(x-y)+2z   

 

(x-y)をカタマリとして扱いにくい と思う方は(x-y)をAなどのように他の文字で変換してみるのがオススメです。

例)(x-y+z)(2+y-x)=\{(x-y)+z\}\{2-(x-y)\}

  x-y=Aとすると

  \{(x-y)+z\}\{2-(x-y)\}

       =(A+z)(2-A)

  =-A^2+(2-z)A+2z    

ここまで計算したらAをx-yに戻します。

置き換えで勝手に登場させた文字を残しておいてはいけません。

答)  =-(x-y)^2+(2-z)(x-y)+2z 

 

どうでしょうか? もう1つ例を挙げてみます。

今度ははじめからグループ化を狙って展開していきます。

例)x(x-1)(x-2)(x-3)

       =\overbrace{x(x-3)}\underbrace{(x-1)(x-2)}  

 x(x-3)(x-1)(x-2)の組み合わせで展開します。すると

 =(\underline{x^2-3x})(\underline{x^2-3x}+2)     似た式が見えましたね(下線部)

 ={(x^2-3x)}^2+2(x^2-3x)      x^2-3xを塊と見て展開します。

*これもわかりにくかったらx^2-3x=Aなど文字でおいても構いません。

 

 何も考えずに前から順番に展開するのではなくグループ化することによって少しでも計算を楽にすると、ミスも減っていくと思います。あと、単純に前から順番に展開すると長くなりすぎてめんどくさいですよね。

 

 

6)代入は最後に!(面倒ごとは後回し)

例)a=x+2y,b=2x+yの時、6a^2+2b-3a(2a-1){\cdots}①の値を求めよ。

 このような問題で、①の式にそのままa=x+2y,b=2x+yを代入しようとする人がいますけれども、それは上記の5)で説明したグループ化をわざわざ解除してるのと同じことですので、絶対にやらないようにしましょう。

そのまま代入してしまうと結果として、式全体が長くごちゃごちゃしますので文字が消えたり、次数を間違えた、などといったミスの原因につながります。

 

 ではいつ代入するのかといいますと、まず①の式を計算できるところまで計算します。そして、式を簡単にしてから代入しましょう。

 

6a^2+2b-3a(2a-1)=\underline{6a^2}+2b-\underline{6a^2}+3a

下線部の同類項をまとめます。すると

=2b+3a      

6a^2-6a^2が消えて簡単な形になりました。

 

この簡単な形になってから最初に与えられたa=x+2y,b=2x+yを代入しましょう。

 

この方が随分楽ですよね。

ポイントは式の形を整えてから代入することです。

 

 

 

7)忘れやすい公式!

ここでは皆さん忘れがちだけど重要な公式をいくつか紹介します。

1)a^3+b^3=(a+b)(a^2-ab+b^2)

2)a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)

3){(a+b+c)}^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca

4)a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)

最低限これくらいは覚えておきましょう。思っている以上に役に立ちます。

因数分解をするときに効いてきます!

 

 

 

8)パスカルの三角形

最後にパスカルの三角形の話をしようと思います。

パスカルの三角形を使えば{(a+b)}^nの係数が簡単に求められます。

数字の並びが{(a+b)}^nの展開公式の係数と一致するのです。

パスカルの三角形の作り方は周りを全部1にしてその下の行は上の隣合う数字を足した値を書きます。

例えば2段目が1と1になっているので3段目は1と上の1と1を足した2と1の1 2 1みたいな感じです。ちょっとずれてますけど下の図を参考にしてもらえるとありがたいです。

 

                     1                          {(a+b)}^0の係数

                              1       1                     {(a+b)}^1の係数

                          1       2       1                {(a+b)}^2の係数

                       1     3       3       1            {(a+b)}^3の係数

                    1    4      6        4      1        {(a+b)}^4の係数

                 1    5    10     10      5       1   {(a+b)}^5の係数

 

 {(a+b)}^0=1

 {(a+b)}^1=a+b

 {(a+b)}^2=a^2+2ab+b^2

 {(a+b)}^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3

 {(a+b)}^4=a^4+4a^3b+6a^2b^2+4ab^3+b^4

 {(a+b)}^5=a^5+5a^4b+10a^3b^2+10a^2b^3+5ab^4+b^5

 

 {(a+b)}^nの係数に困ったときはパスカルの三角形を書いて参考にしましょう。

 

 

 

 今回の記事では数学の計算が楽になったり、計算ミスをできるだけ減らすための工夫のしかたをいくつか紹介しましたので、しっかりと読み込んでもらって少しでも役立ててもらえると嬉しいです。

演算は数学の基本!侮ることなかれ!(笑)

#7.5【4次元5次元…】研究者たちはなぜ高次元を考えるのか 〜高校生からの質問に自分なりに答えてみた〜

こんにちは。医学生Gです。

最近高校生から、

数学者や物理学者が4次元5次元とか、難しいことを考えるのはどうして?

私たちは3次元の世界で生きているのに。考えてなんになるの?」

という質問をいただきました。

 

この記事はこの質問に対する自分なりの答えをまとめてみたものです。

中学生でもわかるように簡単に説明したつもりですので、コーヒーでも飲みながら気楽に読んでいただけると嬉しいです。

 

それでは高校数学からちょっと脱線して、

「次元」というものについて考えていきましょう!

 

 

次元という言葉は説明が難しいのですが、素人的には、

「軸が◯個ある世界を◯次元という」

と考えるといいと思います。

図を用いて具体的に説明しますね。

「次元が増えると移動可能な方向が増える」

ということに注目してもらいたいです。

 

f:id:sarugorirag:20190707204715j:plain

まずは1次元から。

1次元は軸が1つしかない世界です。この軸をx軸とします。

1次元の世界の住人はこのx軸に沿ってのみ移動できます。

つまり、前に進むか後ろにさがるかの2択です。

この人はx軸という直線上のどこかにいることになりますので、

1次元は直線というイメージを持っていれば良いと思います。

 

 

 

f:id:sarugorirag:20190707204805j:plain

続いて2次元です。

軸が2本ある世界です。これをx軸とy軸としましょう。

2次元の世界の住人は横方向(x軸)にも、縦方向(y軸)にも動くことができます。

これらを組み合わせて、斜めの移動というのもオッケーです。

たとえば、横方向に5、縦方向に4移動すれば元の位置から斜めに移動したことになりますよね。

この人はx軸とy軸によって構成される平面上のどこかにいることになりますので、

2次元は平面というイメージを持っていればいいと思います。

 

 

f:id:sarugorirag:20190707204810j:plain

次は3次元です。

2次元の平面に3本目のz軸が加わり、「高さ」という概念が加わります。

図の3次元の世界の住人はバンジージャンプをしている絵を描いてみました。笑

落下中は高さが刻一刻と変化していきます。

この人はx軸、y軸、z軸から成る空間の中にいることになりますので、

3次元は空間というイメージを持つといいと思います。

 

 

ここまで、1〜3次元のイメージと、

次元を上げると移動可能な方向が増える

ということを理解していただけましたでしょうか。

 

ここで自由度という言葉を導入しておきます。

自由度とは、各次元の住人がどれだけ自由に移動できるかを表します。

1次元ではx軸に沿ってのみの移動なので自由度1

2次元ではx軸とy軸に沿って平面上を動けるので自由度2

3次元ではz軸が加わって自由度3となります。

 

次元が増えると自由度が増すのです。

 

 

 

ここからが本題です。

何のために高次元を研究するのかという話をしていきます。

いきなりですが、これまで登場した各住人を閉じ込めてみましょう。

 

f:id:sarugorirag:20190707204815j:plain

1次元の住人の前後を壁で封じました。

もうこの人は動けませんよね。

壁を動かさずに、この人が脱出するにはどうしたらいいでしょうか。

f:id:sarugorirag:20190707204820j:plain

そうです。軸を増やしてy軸方向の移動を許可すればいいのです。

このとき1次元では解決できなかった問題が、

2次元へと次元を上げ、自由度が増すことにより解決できましたよね。

ここがポイントです。

 

 

 

f:id:sarugorirag:20190707204826j:plain

もう少し話を続けます。

今度は2次元の住人を、四方を壁で囲って閉じ込めました。

どうやったら彼を助けることができますか?

 

f:id:sarugorirag:20190707204841j:plain

そうです。z軸をプレゼントして高さのある移動方法を許可するのです。

2次元ではできなかったジャンプという技で脱出できますよね。

ここでも、2次元から3次元にすることで自由度が増し、問題を解決できました。

 

ここで注目してほしいのは、

2次元の住人はジャンプという技を知らないということです。

高さが変化するような移動をしたことがないので当たり前です。

3次元では当たり前のことでも、

2次元の世界の住人にはそれを知るよしもないのです。

 

 

さあ、さらにレベルアップしましょう。

f:id:sarugorirag:20190707204845j:plain

3次元の人を閉じ込めてみました。

あなたはこの人を助けてあげられますか?

思いつかないのであれば、あなたは3次元の世界の住人ですね。

 

4次元の世界の知恵を持っている人がいれば、きっとこう言うはずです。

「過去へと時間を巻き戻し、まだ壁が作られていない状態にすればよい」と。

 

「は!?そんなのアリかよ!!」

と思うかもしれませんが、

私がこの記事を通して皆さんにお伝えしたいのはまさにこの感覚なのです。

 

 

次元を上げ自由度が増すと、それまでの世界では通用しなかった

とんでもないアイデアが通用するようになるのです。

つまり、3次元の考えに囚われていては絶対に思いつかないような解決策が

4次元、5次元と次元を上げていくことにより見つかるかもしれない ということです。

 

 

世の中には通常の物理法則では説明できない謎がまだまだ存在しています。

ブラックホールの存在や素粒子の存在などなど…

これまでの3次元での考え方では解決できない難問も、

4次元、5次元…と高次元の知恵を使えば解決できるかもしれない…そう考えて、研究者たちは高次元の世界に想いを馳せるのです。

 

 

 

注)この記事は数学者でも物理学者でもない、しがない1人の医学生

   尊敬するその道の研究者たちの考えを勝手に想像したものにすぎません。

注)4次元の世界の4本目の軸のとりかたは諸説あります。

    今回は時間軸としてとった、という前提でお話ししました。

 

補足) 次元というものをもう少し厳密に定義するならば、

    「位置を決めるために必要な数の個数」と言えると思います。

      2次元の人の位置を伝えるには(x,y)=(5,4)

     などと2つの数の組み合わせで十分です。

     3次元なら(x,y,z)=(3,2,2) と3つ数で表すことができます。

     数の個数が軸の個数と一致するのです。

 

補足) 自由度 とは様々な領域で使われる言葉で、それぞれで考え方が変わってきます。たとえば物質の回転運動を考慮する場合には今回紹介した数より自由度が増します。

#7 数の種類 part3

前回の記事(#6)では立方数まで紹介しましたよね。

今回はその続きとして、知る人ぞ知る少しマニアックな数を紹介していこうと思います! 

 

 

1)タクシー数

 タクシー数とは2つの立方数の和としてn通りに表せる最小の正の整数のことを言います。これだけだとわかりにくいと思いますので例を見ていきましょう。

 

 n番目のタクシー数をTa(n)とすると

 

Ta(1)=2=1^3+1^3   1番目のタクシー数なので2つの立方数の和として1通りで表せる数のことです。

 

Ta(2)=1729=1^3+12^3=9^3+10^3    2番目のタクシー数なので2つの立方数の和として2通りで表せる数のことです。

 

3番目のタクシー数ならば2つの立方数の和として3通りに、4番目ならば4通りに表すことができます。このような数のことをタクシー数といいます。

 *ちなみに3番目のタクシー数は87539319とさらにとても大きな数になります。

 

ここで、Ta(2)に関する有名なエピソードを紹介します。

天才数学者ラマヌジャンが診療所に入院している時に、見舞いに来たハーディさんが

「1729のナンバーのタクシーに乗ってきたが、なんの特徴もない数字だったなぁ」

という話をしたら、ラマヌジャン

「そんなことはない。とても興味深い数字でそれは2通りの、2つの立方数の和の形で表せる最小の数です。」

とすぐさま返答したらしいです。瞬時にそんなふうに答えられるのはさすがとしか言いようがないですね。このエピソードから、1729はラマヌジャンナンバーと言われることもあります。もし身の回りでナンバーが1729の車を見つけたら、そのオーナーはこのエピソードを知っている数学オタクかも知れませんね。

 

 

2)友愛数

 友愛数とは異なる2つの自然数の組で、自分自身を除いた約数の和が互いにもう一方と等しくなるような数のことをいいます。例えば220と280の組で見ていきましょう。

 

220の約数は1,2,4,5,10,11,20,44,55,110,220です。

280の約数は1,2,4,71,142,280です。

 

 それぞれ自分自身の数字を除いた約数を足していきましょう。

220の方は1,2,4,5,10,11,20,44,55,110を全部足すと280になります。

280の方は1,2,4,71,142を全部足すと220になります。

 どうでしょう。220と280の組で自分自身を除いた約数の和が互いにもう一方と等しくなりましたね。このような数を友愛数といいます。

ロマンチック…ですかね? 笑    

はい、次の数にいきましょう!

 

 

 

3)接吻数(kissing number)

 接吻数とはn次元の単位球(中心からの距離が1の球)の周りに単位球を重ならず触れ合うように並べるとき、並べることができる最大の数のことをいいます。(次元を変えながら、1つボールに同じ大きさのボールを何個くっつけることができるかということを考えていきます。) 

球と球が接していることをkissingと表現しているところがなんかオシャレですよね。そんなことは置いといて、早速例をみてみましょう。

 

 1次元は簡単に言えば直線のことです。直線上に単位球を並べると1つの単位球にはその両側に2つしか接することができませんよね?よって1次元の接吻数は2になります。イメージは下の図の感じです。赤色の球にいくつの球をくっつけられるかを考えていきます。

f:id:sarugorirag:20190704135435j:plain

 

 2次元は簡単に言えば平面のことです。1次元の単位球に対して縦方向にも単位球を追加できるようになりました。先ほどの1次元の図の上下に単位球を2つずつ加えることができますよね。よって2次元の接吻数は6になります。イメージとしてはこんな感じです。

f:id:sarugorirag:20190704135608j:plain

 3次元は2次元の平面に高さを足した空間のことです。すると2次元の図の下側(黄色い球)と上側(青い球)に3個ずつ球をさらに追加することができますよね。よって3次元の接吻数は12になります。*下の図空間を真上から見下ろした図です。

化学で登場する六方最密構造と同じような配置になっています。

f:id:sarugorirag:20190704135616j:plain

 4次元から想像するのが難しくなってくるので飛ばしてもらっていいです。4次元を空間に時間軸を加えたもの、と考えるならば、時間軸に沿って1回移動する前後で3次元の接吻数12の状態をそれぞれ作ることができるので、接吻数は12の2倍で24となります。

5次元以上は…自分には想像できないです(泣)

 

 

 

 

今回の記事は以上になります。

マニアックな話も多かったですが、様々な数の種類があることを、面白い と思ってもらえると嬉しいです。

稀にですが、今回紹介したような教科書に載っていないことが入試問題を作るうえで題材になることもあります。雑学として知っておくと、いいことがあるかも知れませんね。

#6 数の種類 part2

 #5では自然数から複素数まで系統的に紹介しましたが、

今回はそれらとは一味違う数の種類について紹介していきます。

 

 

1)素数合成数

 素数とは1を除き、1とその数でしか割れない正の整数(自然数)のことを言います。

例えば2は1と2でしか割れませんし、13も1と13でしか割れませんよね。このような数が素数です。

素数の特徴として、他の数との最小公倍数が大きくなるということが挙げられます。

 

 

 

 

自然界において、この素数の特徴を利用しているセミがいます。素数セミとも呼ばれるそのセミは、13年ないし17年間という素数の周期で大量発生します。13年に一度大量発生するセミと17年に一度大量発生するセミが同時に大量発生するのはなんと221年に一度だけですよね。これによって他方のセミと間違って交尾する可能性を低くしているのです。自分の種が自然界で生き残るための工夫ですね。

 

 素数に対して、1とその数以外でも割ることのできる正の整数(自然数)には合成数という名前がついています。

 

21を例にしてみましょう。21は1と21以外にも3や7で割ることができます。このような数字を合成数と言います。

合成数素数を掛け合わせてできた数字とも言えます。

 

このとき、合成数素数の積の形に、バラバラにすることを素因数分解といいます。

  例として120を素因数分解します。120を構成する素数は2,3,5であり、これらの素数を利用して2^3×5×3と表すことができます。この2^3×5×3の形が素因数分解です。

 素因数分解の結果から正の約数やその個数、総和など求めることができます。求め方はまた別の記事で紹介するかもしれません。

 

 

 

2)完全数

 完全数とはその数自体が、自分自身を除く正の約数の和に等しくなる自然数のことです。言葉にすると難しいので例をみてみましょう。

 

6について考えてみましょう。

6の正の約数は1,2,3,6ですね。自分自身である6を除く正の約数を足してみましょう。1+2+3=6となり、自分自身を除く正の約数を足した結果が、自分自身(この場合6)に一致しましたね。このような自然数のことを完全数といいます。

 

他に496などもありますので是非確かめてみてください。

 ちなみに月の公転周期は28日ですが、この28も完全数です。

 

 完全数については、「偶数の完全数は無数に存在するのか」「奇数の完全数は存在するのか(見つかっている完全数は全て偶数のため)」など未解決な問題があり、まだ謎に包まれている部分もあります。

 

 

 

3)奇数と偶数

 奇数(odd number)とは2で割り切れない整数のことです。

1,3,5,11,23,45,…など 数字の1の位が1,3,5,7,9 になるのが特徴です。

 これに対し、2で割り切れる整数のことを偶数(even number)といいます。

2,4,6,12,24,36,40,…など1の位が2,4,6,8,0になるのが特徴です。

 

偶数の中でも2で割り切れるが4で割り切れない整数を単偶数または半偶数といい、4で割り切れる偶数を複偶数または全偶数といったりと、偶数の中でもさらに分類があるみたいです。

 

ふと思ったんですけど、チームスポーツの人数って奇数が多くないですか?

野球は9人、バスケは5人、サッカーは11人などなど。

 偶数の例としては、オリンピックは夏季、冬季ともに西暦年数が偶数の年に開催されますね。サッカーのW杯も西暦年数が偶数の年に開催されます。

 

 

 

4)平方数と立方数

 平方数とはある整数を二乗した数のことを言います。

 例として1,4,9 などがあげられます。1は1×1、4は2×2、9は3×3 となっており、ちゃんと整数の二乗で表されていますよね。

 

 立方数とはある整数を三乗した数のことを言います。

 例として8や27などがあげられます。8は2×2×2、27は3×3×3の形となっていてそれぞれ三乗の形になっていますよね。

 

 

 

立方数にまつわる面白い話があるのですが次回の記事に回したいと思います。

今回紹介した数は有名なものばかりですので是非覚えておいてくださいね。

次回はさらにレベルアップした、マニアックで面白い記事にしようと思うので楽しみにしていてください(^^)

 

 

 

#5 数の種類 part1

 突然ですが「数」って人類が生み出した、ものすごい発明品だと思いませんか?

今私たちの身のまわりには数字があふれていて、物事の程度を知ったり、それらを比較したりするのに役立っています。

 

さて、本題に入りますが、「◯◯数」って言葉、いくつ挙げられますか?

よく耳にするのは実数とか自然数とかでしょうか。

 

 このような「◯◯数」たちは開発された順に系統立てて整理することができます。

諸説ありますが、

「まずはじめに自然数が開発され、そこから必要に応じて拡張されていき、より複雑な数が誕生していった」

と考えるとよいと私は思います。まあ、細かいところは多少目をつぶりつつ、ざっくりと説明していきます。

 

 

1)自然数(\mathbb{N}) :Natural number のN

最初に登場する数です。自然数は1,2,3,4…みたいな数のことをいい、1個、2個、3個…などと物を数えるのに使います。

これを使えば四則演算(+-×÷)も日常のレベルなら、ある程度問題なくできます。

自然数は、「正の整数」とも言えます。

 

 

 

2)整数(\mathbb{Z})  :Zahlen(ドイツ語)由来

ひとことで説明すると「自然数\mathbb{N}に0と負の整数を加えたもの」と言えます。

引き算をしていて 5-5=?  5-7=?  のような場面に遭遇した場合、0や負の整数が必要になってきますよね。

整数\mathbb{Z} は、このような引き算における問題を克服するため、自然数\mathbb{N}を拡張してできた数 と言えると思います。

 

 

 

3)有理数(\mathbb{Q})  :英単語 Quotient(商)由来

有理数は2つの整数a,bで\frac{a}{b}分数の形で表せる数のことです。

そう、分数が使えるようになったんです。

割り算で 1÷3=0.3333… ←これどうするの?  永遠に書くの?

というような場面から必要になってきたんだと思います。

分数を使えば \frac{1}{3} と書けて解決しますね。

有理数\mathbb{Q} の登場により割り算の結果は基本的に表せるようになりました。

もちろんこれまでに登場した整数\mathbb{Z}も、分母が1の分数の形で表すことができるので有理数です。(例 3=\frac{3}{1})

 

 

 

4)実数(\mathbb{R}) :Real numberのR

実数\mathbb{R}有理数\mathbb{Q}無理数というヤツを加えたものです。

面積と長さの関係とかを考えていくと必要になってきます。

(土地の分割仕方を考えたりと、結構昔から考えられてきたことだと思います。)

面積2の正方形の一辺の長さは? となった時に無理数を登場させれば\sqrt{2}と答えることができます。

 

無理数とは分数の形にできない数のことを言います。\sqrt{2}など、ルート付きの数には分数で表せないものが多いです。

(\sqrt{1}とか\sqrt{4}とか\sqrt{9}とか…なら整数になってくれるので有理数なんですけどね。その他多数の、キレイな整数にならないルートは大体無理数です。)

のちに、π(円周率)やe(自然対数の底),\varphi(黄金比)などの特別な数も、分数で表せない(循環しない無限小数である)ことがわかり、無理数と分類されました。

 

ちなみに、この無理数を含む実数\mathbb{R}までの範囲で数直線が完成します。

これまでに登場した

π、\sqrt{2}、0、\frac{2}{5}、-4

などこれら全部、数の大小を比較できますからね。

 

 

 

 5)複素数(\mathbb{C}) :Complex number のC

複素数\mathbb{C}は、Real Number(実数)と Imaginary Number(虚数) を合わせたものです。

 複素数a+biの形で表しますが、実部(a)と虚部(bi)の2つの数を組み合わせた形であることがなんとも特徴的ですね!

 

ここで登場するiは虚数単位と呼ばれ、i^2=-1 と定義されます。

二乗してマイナスになる数なんてこれまでにはなかったですよね。

ですのでiを含む数は、実数とは違う架空の数ということで、

Imaginary Number(虚数)と呼ばれるのです。

 

a+biのbを0にするとiが登場する虚部がなくなるので実数となります。

(例: 2\qquad(a=2,b=0) )

逆に言えば、これまでの 1)自然数 から4)実数 までは全て、

複素数のうちb=0 の場合のみを考えてきたことになります。

 

bが0でないときは虚部が登場するので虚数といい、これまでの実数とは区別されます。

(例: 2+3i\qquad(a=2,b=3) )

 特に、a=0,b \ne0の場合は実部が消え、虚数と呼ばれます。

(例: 3i\qquad(a=0,b=3) )

 

 #3,4で触れましたが、複素数\mathbb{C}二次方程式の演算をする上で必要になってきます。

例えばx^2-x+1=0  の解、  x=\frac{1\pm\sqrt{-3}}{2}

\sqrt{-3}の部分が ルートの中に負の数! おかしな事になっています。

ルートの中は0以上なのに! (#3 ルートについて考える)

このような場合に虚数単位iを用いて x=\frac{1\pm\sqrt{3}i}{2} とすればいいのです。

 

 

今回の記事をまとめるとこうなります。

 \mathbb{C}\supset\mathbb{R}\supset\mathbb{Q}\supset\mathbb{Z}\supset\mathbb{N}  

A\supset B\toBはAに含まれることを言います。

ごめんなさい難しいですよね。

表にするとこんな感じです!

この表が何も見ずに書けるようになればバッチリだと思います。

f:id:sarugorirag:20190701125809j:plain

数の種類と包含関係

 

今回の記事は以上になります。

何事も順を追って一歩ずつ理解していくことが大切ですね。

#4 判別式と虚数解について

 以前の記事 (#2)では二次方程式の解き方について考えましたが、二次方程式っていつでも実数解が出るわけではないんですよね…

今回は二次方程式の解について詳しく考えていこうと思います

 

 

まずはx^2-x+1=0で考えていきましょう。

 今回は#2で説明したように「2乗して◯◯になる数は?」作戦で解いていきます。

 

x^2-x+1=0

 

{(x-\frac{1}{2})}^2+\frac{3}{4}=0             まず、平方完成します。

 

{(x-\frac{1}{2})}^2=-\frac{3}{4}                2乗して-\frac{3}{4}になる数はなんですか?     

 

 x-\frac{1}{2}=\pm\sqrt{-\frac{3}{4}}           \pm\sqrt{-\frac{3}{4}}ですね。

 

x=\frac{1\pm\sqrt{-3}}{2}                       整理するとこうなります。

 

ここに至るまでに思った方もいるかもしれませんが、ルートの中がマイナスっておかしくないですか?ルートは正の数のはずなのに…

 

これが#3で少し紹介しました虚数ってやつです。

最初にお話しした通り二次方程式はいつでも実数解が出るわけではないんです。

実感していただけましたか?

 

 

次の話に行きます。

二次方程式の話に関連するキーワードとして 判別式 というものがあります。

 判別式という名前を聞いたことがある人は多いと思いますが、「判別式が何を判別するものなのか」をちゃんと理解していますか?

 これから、判別式によって二次方程式、二次関数の何を判別できるのかを説明していきたいと思います。

 

#2で説明した通りax^2+bx+c=0の解はx=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}でしたよね?

 

 ここで二次方程式の解が実数なのか虚数なのかはどこで見分けるかといいますと、ルートの中が0以上なのか0より小さいのかで判別します。

 

つまり、上記で示した解のルートの中身であるb^2-4acが0以上なのか0より小さいかで二次方程式の解が実数なのか虚数なのかがわかります。

ルートの中が0以上であれば解は実数であり、0より小さければ解は虚数ですよね。 このb^2-4acこそが判別式なのです。

 

まとめると

D=\begin{cases}b^2-4ac≧0\qquad実数\\b^2-4ac<0\qquad 虚数\end{cases}\

*判別式のDは英単語 discriminant のDです。

 

このとき解の個数が何個になっているかをみてみると、

 

D>0のときはb^2-4ac>0より\pm\sqrt{b^2-4ac} が残るため実数解が2個

D=0のときはb^2-4ac=0となり、\pm\sqrt{b^2-4ac} が0となって消えるため、解はx=\frac{-b}{2a}だけとなり 実数解 1個

D<0のときはb^2-4ac<0となるため、\pm\sqrt{b^2-4ac}虚数として残り、虚数解が2個出てきます。

 

 以上、判別式を用いた実数解・虚数解の判別の仕方を理解してもらえましたでしょうか。

 

 

次に判別式の値と二次関数のグラフの関係についてみていきましょう!

 y=ax^2+bx+c の二次関数について考えていきます。

 

1)D>0のとき 二次関数とx軸は2点で交わるため、実数解は2個。

x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a} が2つの交点のx座標になります。

f:id:sarugorirag:20190629014143p:plain

2)D=0のとき 二次関数とx軸は接するため、実数解は1個

x=\frac{-b}{2a}  これは接点のx座標になります。

f:id:sarugorirag:20190629013926p:plain

3)D<0のとき 実数解は0個。

実数解がないということは 放物線とx軸が交点を持たない ということと対応しています。

f:id:sarugorirag:20190629014244p:plain

以上、 判別式とグラフの関係性を理解してもらえましたか?

 

 

 

今回説明したことを表にまとめると以下のようになります。

  二次方程式 放物線とx軸との交点
D>0のとき 実数解2個 2個
D=0のとき 実数解1個 1個
D<0のとき 虚数解2個 0個

 

 判別式は数学の問題を解く上でいろんなところで必要となる重要な式であるため、この記事を通して判別式について理解を深めてもらえると嬉しいです。