医学生Gの数学ノート

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#14 加法定理登場! その1

 おはようございますこんばんは、医学生Gです。みなさん、加法定理はもう学校で習いましたか?長い式を丸暗記しなくてはならない…と思うと辛くなりますよね。今回は加法定理を単位円を使って証明する方法を紹介していきたいと思いますので、1)~2)まで読んでみてください。

 

1)加法定理

 まず、加法定理の確認から。

 

\sin(α+β)=\sinα\cosβ+\cosα\sinβ

\sin(α-β)=\sinα\cosβ-\cosα\sinβ

\cos(α+β)=\cosα\cosβ-\sinα\sinβ

\cos(α-β)=\cosα\cosβ+\sinα\sinβ

式の真ん中の符号はプラマイマイプラで覚えよう!

\displaystyle\tan(α+β)=\frac{\tanα+\tanβ}{1-\tanα\tanβ}

覚え方は”イチマイタンタンタンプラタン”グラタンみたいで美味しそうですね(笑)

\displaystyle\tan(α-β)=\frac{\tanα-\tanβ}{1+\tanα\tanβ}

 

ちなみに、tan(α+β)、tan(α-β)の式の真ん中の符号も上からプラマイマイプラになっていますね。

 

 

 

2)単位円での証明

  これは実際に東大の入試問題として出題されたこともあります。基本をしっかり押さえよ という東大からのメッセージですね。(1)〜(5)まであります。

(1)cos(α+β)

f:id:sarugorirag:20190819210020p:plain

  上図のように点と角度を設定します。

A(1,0)、B(\cosα,\sinα)、C(\cos(α+β),\sin(α+β))、

D(\cos(-β),\sin(-β))=(\cosβ,-\sinβ)、*β1=β

 

f:id:sarugorirag:20190819211908p:plain


 上図のように、補助線を引くと三角形が2つできますね。
 ここで、△AOCと△BODは、2辺とその間の角が等しいため△AOC≡△BODであると言えます。

CA=BDなので各点の座標を用いて以下のように立式すると、

(CA)^2=(BD)^2より

\{1-\cos(α+β)\}^2+\sin^2(α+β)=(\cosα-\cosβ)^2+(\sinα+\sinβ)^2

 

展開すると、

1-2\cos(α+β)+\cos^2(α+β)+\sin^2(α+β)

=\cos^2α-2\cosα\cosβ+\cos^2β+\sin^2α+2\sinα\sinβ+\sin^2β

 

\sin^2+\cos^2=1より

 

1-2\cos(α+β)+1=1+1-2\cosα\cosβ+2\sinα\sinβ   

 

式を整理します。

-2\cos(α+β)=-2\cosα\cosβ+2\sinα\sinβ  

 

 全体を-2で割りると

 \underline{\cos(α+β)=\cosα\cosβ-\sinα\sinβ}

 

これで\cos(α+β)の証明が終わりました。

 

以下の(2)〜(4)cos(α+β)をベースに考えますので、最低でも(1)はしっかりと覚えておきましょう。

 

 

 

(2)cos(α-β)

 \cos(α-β)の証明はβに変えるだけです。

\cos(α-β)

=\cosα\cos(-β)-\sinα\sin(-β)

=\cosα\cosβ+\sinα\sinβ

 

\underline{\cos(α-β)=\cosα\cosβ+\sinα\sinβ}

 

 

 

(3)sin(α+β)

ここから\sin(α+β)の証明をしたいと思います。

 

 以前の記事#13で説明した90°+θのθを-θに変えただけである90°-θを利用すると、cosをsinに変えることができます。     

*cos(90°-θ)=sinθ

 

これを利用すると

\sin(α+β)

=\cos \{90°-(α+β)\}

 

ここで90°-(α+β)を(90°-α)と-βに分けます

=\cos \{(90°-α)-β)\}  

=\cos(90°-α)\cosβ+\sin(90°-α)\sinβ

=\sinα\cosβ+\cosα\sinβ

 

\underline{\sin(α+β)=\sinα\cosβ+\cosα\sinβ}

 

これで\sin(α+β)の証明は終わりです。

 

 

 

(4) sin(α-β)

\sin(α-β)は \cos(α-β)の時と同じでβに変えます。

すると、

 

\sin(α-β)

=\sinα\cos(-β)+\cosα\sin(-β)

=\sinα\cosβ-\cosα\sinβ

 

\underline{\sin(α-β)=\sinα\cosβ-\cosα\sinβ}

 

 

 

 (5)tan(α+β)、tan(α-β)

 tan(α+β)、 tan(α-β)は\underline {\tanθ= \frac{ \sinθ}{ \cosθ}}を利用して求めます。

 

 \tan(α+β)

= \displaystyle\frac{ \sin(α+β)}{ \cos(α+β)}

 =\displaystyle\frac{\sinα\cosβ+\cosα\sinβ}{\cosα\cosβ-\sinα\sinβ}

ここで、分母分子をcosαcosβで割ります。

すると、

=\displaystyle\frac{ \frac{\sinα}{\cosα}+\frac{\sinβ}{\cosβ}}{1-\frac{\sinα\sinβ}{\cosα\cosβ}}

 

\tanθ= \frac{ \sinθ}{ \cosθ}を利用して整理すると、

\underline{\displaystyle\tan(α+β)=\frac{\tanα+\tanβ}{1-\tanα\tanβ}}

 

 \tan(α-β)

= \displaystyle\frac{ \sin(α-β)}{ \cos(α-β)}

 =\displaystyle\frac{\sinα\cosβ-\cosα\sinβ}{\cosα\cosβ+\sinα\sinβ}

これも分母分子をcosαcosβで割ります。

すると、

=\displaystyle\frac{\frac{\sinα}{\cosα}-\frac{\sinβ}{\cosβ}}{1+\frac{\sinα\sinβ}{\cosα\cosβ}}

 また\tanθ= \frac{ \sinθ}{ \cosθ}を利用して整理しましょう!

\underline{\displaystyle\tan(α-β)=\frac{\tanα-\tanβ}{1+\tanα\tanβ}}

 

 長々となりましたが、これで全ての加法定理の証明が終わりましたね。

 

 加法定理の証明はまず単位円を用いてベースである\cos(α+β)を求めてから、残り3つをこんな感じで証明しますので、一度はしっかりと理解してください。最低でも(1)はできるようにしましょう。東大が以前出しているので、もしかしたらあなたが受ける大学の入試問題で出るかもですよ?(笑)

 

 次回の記事は長方形を使った、直感的に分かりやすい加法定理の説明をしますので、ぜひそちらも読んでみてください。今回の記事で加法定理の証明はしっかりと覚えておきましょう。