医学生Gの数学ノート

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#22 ベクトル講座(内分点・外分点の立式を詳しくみていく)

 みなさん、ベクトルの調子はどうですか。苦手意識はありますか。ベクトルが使えると、これまで閃めきが必要だった図形問題もゴリゴリ計算で解くことも可能になります。ですので、図形が苦手な人も頑張って取り組んでほしいです。

 

話を戻してベクトルはしっかりと立式できるかが重要です。今回はベクトルの中でもつまずく人が多い内分、外分点についてベクトルの立式の練習と思って説明していきます。それでは早速みていきましょう。

 

1)内分点のお話

例1) 線分ABを3:1に内分する点P

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①1つ目の考え方

OからスタートしてAまで行き、Pに行くと考えると

\displaystyle\vec{OP}=\vec{OA}+\frac{3}{4}\vec{AB}

\displaystyle=\vec{OA}+\frac{3}{4}(\vec{OB}-\vec{OA})

=\displaystyle\frac{1}{4}\vec{OA}+\frac{3}{4}\vec{OB}

 

②2つ目の考え方

線分OAと線分OBをそれぞれ4等分しておいて、分けられたOAとOBをそれぞれいくつ足せば点Pにたどり着けるかという考え方でやると、

\displaystyle\frac{1}{4}\vec{OA}×1\displaystyle\frac{1}{4}\vec{OB}×3 を合わせることで点Pに行けますね。

これより

\displaystyle\vec{OP}=\frac{1}{4}\vec{OA}+\frac{3}{4}\vec{OB}

 

つまり、

\displaystyle\vec{OP}=\frac{\vec{OA}+3\vec{OB}}{4}

\displaystyle =\frac{\vec{OA}+3\vec{OB}}{3+1}

 

以上の考え方を用いると

一般に、線分ABをs:tに内分する点Pは

\displaystyle\vec{OP}=\frac{t\vec{OA}+s\vec{OB}}{s+t} と表すことができます。

 

よくベクトルでは分母を消せるように s+t=1、つまり s=1-t とすることが多いですのでこれも覚えておきましょう。

 

2)外分点のお話

外分点の公式をみてみると内分の公式にはないマイナスが登場してますよね。あれってどこから来たの?って疑問に思いませんか。これから外分の公式がどのように考えられてできたかを説明します。

例)線分ABを3:1に外分する点P

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視点を変えて、外分を内分として考えてみましょう。

点BはAPを2:1に内分する点と考えることができます。

つまり1)の内分の公式を利用すると、

 \displaystyle\vec{OB}=\frac{\vec{OA}+2\vec{OP}}{3}

両辺3倍して 3\vec{OB}=\vec{OA}+2\vec{OP}

移項して 2\vec{OP}=-\vec{OA}+3\vec{OB} ←ここでマイナスが登場しました!

\vec{OP}=\frac{-\vec{OA}+3\vec{OB}}{2}

\displaystyle\vec{OP}=\frac{-\vec{OA}+3\vec{OB}}{3-1}

これでいつもの外分の公式になりましたね。

 

これを一般形で考えてみます。

線分ABをs:tに外分する点Pを考えてみましょう

 

ⅰ) s>tの時

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BはAPを(s-t):tに内分する点と考えると

  \displaystyle\vec{OB}=\frac{t\vec{OA}+(s-t)\vec{OP}}{(s-t)+t}

両辺をs倍すると

s\vec{OB}=t\vec{OA}+(s-t)\vec{OP}

移項して

(s-t)\vec{OP}=-t\vec{OA}+s\vec{OB}

両辺を(s-t)で割ると

\displaystyle\vec{OP}=\frac{-t\vec{OA}+s\vec{OB}}{s-t}

 

ⅱ) s<tの場合

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AはBPをs:t-sに内分する点として考えると、

 \displaystyle\vec{OA}=\frac{s\vec{OB}+(t-s)\vec{OP}}{(t-s)+s}

両辺をt倍すると

t\vec{OA}=s\vec{OB}+(t-s)\vec{OP}

移項して

(t-s)\vec{OP}=t\vec{OA}+s\vec{OB}

両辺を(t-s)で割ると

\displaystyle\vec{OP}=\frac{t\vec{OA}-s\vec{OB}}{t-s}

右辺の分母分子に-1をかけると

\displaystyle\vec{OP}=\frac{-t\vec{OA}+s\vec{OB}}{s-t}

となりⅰ)と同じ形になりましたね。

 

ⅲ) s=tの時

s=tの時?って思った人も多いんじゃないでしょうか。直線上で2点の外側にあり、2点から等しい距離にある点を想像してみてください。s>tからどんどんs、tの値を近づけてみると、、、

 

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点Aと点Bが一致しましたね。直線上で2点の外側で、2点から等しい距離にある点は2点が同一の点の場合である以外には作れません。つまり、s=tの時の2点からの外分点は存在しません。

 

 

 外分の公式では一見、内分の公式のtが-tになったようにみえます。このマイナスがどこからやってきたのか。何度も言いますがそれは移項によって生まれたものです。ただ単に公式を覚えるのもいいですけれども、なんでこうなるんだ?と疑問に思うことも大事ですね。

 

 これまで内分・外分の公式をベクトルを使って証明していきましたが、立式するということの感覚を少し分かっていただく事はできたでしょうか。点の位置関係をそのまま式で表す。言ってしまえばそれだけなのですが慣れるまでは大変ですよね。もう少し、立式の練習として次の問題に挑戦してみましょう。

 

3)例題

関係\displaystyle\vec{OA}=3\vec{AB}+2\vec{AD}を満たす四角形ABCDがある。ABを2:1に内分する点をP、ACを1:1に内分する点をQとし、PQの延長線とCDとの交点をRとしたとき、比CR:RDを求めよ。(小樽商科大)

 

 

 

 

ここから下は解答を載せておきますので、解き終わったら参考にしてください。

 

問題文より

\begin{cases}①点Cは3倍の \vec{AB}と2倍の \vec{AD}のところにある点\\②点Pは直線AB上の点\\③点Qは線分ACの中点\\④点Rは直線DC上の点\\⑤点Rは直線PQ上の点\end{cases}\

これから以下のように立式することができる。

(ひとつずつ丁寧に、正確に立式していこう!)

 

\displaystyle\begin{cases}①\vec{AC}=3\vec{AB}+2\vec{AD}\\②\vec{AP}=\frac{3}{2}\vec{AB}\\③\vec{AQ}=\frac{1}{2}\vec{AC}\\④\vec{DR}=t\vec{DC} \quad直線上にある場合は実数倍で表すことができる。\\⑤\vec{PR}=s\vec{PQ}\end{cases}\

※t、sは実数

 

今求めたいのはCR:RDであるので①〜⑤を用いてs、tの値を求めることができれば、解くことができる。

(では、ベクトルの始点をAにそろえて解いていきます。)

 

①、③より

\displaystyle\vec{AQ}=\frac{1}{2}(3\vec{AB}+2\vec{AD})

               \displaystyle=\frac{3}{2}\vec{AB}+\vec{AD}\cdots⑥

 

④より

\vec{DR}=\vec{AR}-\vec{AD}=t\vec{DC}

\vec{AR}-\vec{AD}=t(\vec{AC}-\vec{AD})

\vec{AR}=t\vec{AC}+(1-t)\vec{AD}

①を代入して整理すると、

\vec{AR}=3t\vec{AB}+(1+t)\vec{AD}\cdots⑦

 

⑤より

\vec{PR}=\vec{AR}-\vec{AP}=s\vec{PQ}

\vec{AR}-\vec{AP}=s(\vec{AQ}-\vec{AP})

\vec{AR}=s\vec{AQ}+(1-s)\vec{AP}

②、③を代入して整理すると

\displaystyle\vec{AR}=(\frac{2}{3}+\frac{5}{6}s)\vec{AB}+s\vec{AD}\cdots⑧

 

(⑦、⑧のように同じもの\vec{AB}、\vec{AD}を使って2通り表すことで、その係数を比較することができる。)

⑦、⑧の係数を比較して

\displaystyle\begin{cases}3t=\frac{2}{3}+\frac{5}{6}s\cdots⑨\\1+t=s\cdots⑩\end{cases}\

⑨×6を⑩に代入して

18t=4+5(1+5)

13t=9

\displaystyle t=\frac{9}{13}

これを⑨or⑩に代入すると

\displaystyle s=\frac{22}{13}

 

\displaystyle\begin{cases}t=\frac{9}{13}\\s=\frac{22}{13}\end{cases}\

 

よって

\displaystyle\vec{DR}=\frac{9}{13}\vec{DC}

 

DR:RC=9:4  (答)

 

 

先ほども述べましたが問題文を読んで与えられた条件をしっかり立式することができれば、あとはゴールに向かってゴリゴリ計算するだけで解けるのです。このことをしっかりマスターすれば、トリッキーな閃きなんて必要とせずに図形の問題を解いていくことができます。これって魅力的なことですよね。

ただしゴリゴリ計算の部分ではどうしても計算の正確さ・スピードが必要になってきますので、その点も含めていろいろ問題を解く中でパワーアップしていって下さい。