医学生Gの数学ノート

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#7.5【4次元5次元…】研究者たちはなぜ高次元を考えるのか 〜高校生からの質問に自分なりに答えてみた〜

こんにちは。医学生Gです。

最近高校生から、

数学者や物理学者が4次元5次元とか、難しいことを考えるのはどうして?

私たちは3次元の世界で生きているのに。考えてなんになるの?」

という質問をいただきました。

 

この記事はこの質問に対する自分なりの答えをまとめてみたものです。

中学生でもわかるように簡単に説明したつもりですので、コーヒーでも飲みながら気楽に読んでいただけると嬉しいです。

 

それでは高校数学からちょっと脱線して、

「次元」というものについて考えていきましょう!

 

 

次元という言葉は説明が難しいのですが、素人的には、

「軸が◯個ある世界を◯次元という」

と考えるといいと思います。

図を用いて具体的に説明しますね。

「次元が増えると移動可能な方向が増える」

ということに注目してもらいたいです。

 

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まずは1次元から。

1次元は軸が1つしかない世界です。この軸をx軸とします。

1次元の世界の住人はこのx軸に沿ってのみ移動できます。

つまり、前に進むか後ろにさがるかの2択です。

この人はx軸という直線上のどこかにいることになりますので、

1次元は直線というイメージを持っていれば良いと思います。

 

 

 

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続いて2次元です。

軸が2本ある世界です。これをx軸とy軸としましょう。

2次元の世界の住人は横方向(x軸)にも、縦方向(y軸)にも動くことができます。

これらを組み合わせて、斜めの移動というのもオッケーです。

たとえば、横方向に5、縦方向に4移動すれば元の位置から斜めに移動したことになりますよね。

この人はx軸とy軸によって構成される平面上のどこかにいることになりますので、

2次元は平面というイメージを持っていればいいと思います。

 

 

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次は3次元です。

2次元の平面に3本目のz軸が加わり、「高さ」という概念が加わります。

図の3次元の世界の住人はバンジージャンプをしている絵を描いてみました。笑

落下中は高さが刻一刻と変化していきます。

この人はx軸、y軸、z軸から成る空間の中にいることになりますので、

3次元は空間というイメージを持つといいと思います。

 

 

ここまで、1〜3次元のイメージと、

次元を上げると移動可能な方向が増える

ということを理解していただけましたでしょうか。

 

ここで自由度という言葉を導入しておきます。

自由度とは、各次元の住人がどれだけ自由に移動できるかを表します。

1次元ではx軸に沿ってのみの移動なので自由度1

2次元ではx軸とy軸に沿って平面上を動けるので自由度2

3次元ではz軸が加わって自由度3となります。

 

次元が増えると自由度が増すのです。

 

 

 

ここからが本題です。

何のために高次元を研究するのかという話をしていきます。

いきなりですが、これまで登場した各住人を閉じ込めてみましょう。

 

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1次元の住人の前後を壁で封じました。

もうこの人は動けませんよね。

壁を動かさずに、この人が脱出するにはどうしたらいいでしょうか。

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そうです。軸を増やしてy軸方向の移動を許可すればいいのです。

このとき1次元では解決できなかった問題が、

2次元へと次元を上げ、自由度が増すことにより解決できましたよね。

ここがポイントです。

 

 

 

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もう少し話を続けます。

今度は2次元の住人を、四方を壁で囲って閉じ込めました。

どうやったら彼を助けることができますか?

 

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そうです。z軸をプレゼントして高さのある移動方法を許可するのです。

2次元ではできなかったジャンプという技で脱出できますよね。

ここでも、2次元から3次元にすることで自由度が増し、問題を解決できました。

 

ここで注目してほしいのは、

2次元の住人はジャンプという技を知らないということです。

高さが変化するような移動をしたことがないので当たり前です。

3次元では当たり前のことでも、

2次元の世界の住人にはそれを知るよしもないのです。

 

 

さあ、さらにレベルアップしましょう。

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3次元の人を閉じ込めてみました。

あなたはこの人を助けてあげられますか?

思いつかないのであれば、あなたは3次元の世界の住人ですね。

 

4次元の世界の知恵を持っている人がいれば、きっとこう言うはずです。

「過去へと時間を巻き戻し、まだ壁が作られていない状態にすればよい」と。

 

「は!?そんなのアリかよ!!」

と思うかもしれませんが、

私がこの記事を通して皆さんにお伝えしたいのはまさにこの感覚なのです。

 

 

次元を上げ自由度が増すと、それまでの世界では通用しなかった

とんでもないアイデアが通用するようになるのです。

つまり、3次元の考えに囚われていては絶対に思いつかないような解決策が

4次元、5次元と次元を上げていくことにより見つかるかもしれない ということです。

 

 

世の中には通常の物理法則では説明できない謎がまだまだ存在しています。

ブラックホールの存在や素粒子の存在などなど…

これまでの3次元での考え方では解決できない難問も、

4次元、5次元…と高次元の知恵を使えば解決できるかもしれない…そう考えて、研究者たちは高次元の世界に想いを馳せるのです。

 

 

 

注)この記事は数学者でも物理学者でもない、しがない1人の医学生

   尊敬するその道の研究者たちの考えを勝手に想像したものにすぎません。

注)4次元の世界の4本目の軸のとりかたは諸説あります。

    今回は時間軸としてとった、という前提でお話ししました。

 

補足) 次元というものをもう少し厳密に定義するならば、

    「位置を決めるために必要な数の個数」と言えると思います。

      2次元の人の位置を伝えるには(x,y)=(5,4)

     などと2つの数の組み合わせで十分です。

     3次元なら(x,y,z)=(3,2,2) と3つ数で表すことができます。

     数の個数が軸の個数と一致するのです。

 

補足) 自由度 とは様々な領域で使われる言葉で、それぞれで考え方が変わってきます。たとえば物質の回転運動を考慮する場合には今回紹介した数より自由度が増します。