医学生Gの数学ノート

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#10 因数分解の基礎 part2

 今回の記事は前回に引き続き因数分解のお話をしていこうと思います。今回はより難しい因数分解を行う際のポイントをいくつか紹介していますので、3)〜5)をしっかりと読み込んでもらえると嬉しいです。それでは見ていきましょう。

 

3)困った時の打開策

  #9の 2)因数分解の基本的な手順 で上手くいかない場合に、a^2-b^2の形を目指して無理やり二乗を作ることによって解決する場合がありますので、その例とともに説明します。

 

例)x^4+4            

 

「これどうやって因数分解するんだろう」って思いませんか?

 

 こんな時に先ほど説明したa^2-b^2の形を目指して無理やり二乗を作る方法をやってみます。

 

x^4+4=(x^4+4x^2+4)-4x^2  

2乗を作るのに足りなかった 4x^2を補い、後ろで調整します。計算したら元の式に戻るように調整してくださ。

 

すると、

x^4+4=(x^4+4x^2+4)-4x^2

          ={(x^2+2)}^2-{(2x^2)}^2=(x^2+2x+2)(x^2-2x+2)

 

 上のようにa^2-b^2が作れたら、あとはa^2-b^2因数分解をして終わりです。

 

 

 4)対称性のある式の扱い

 #9の 2)④で降べきの順に並べるとき、どの文字について降べきの順で並べるべきかをあらかじめ決めておきましょう。今回はaについての降べきの順にしてやっています。

あまりに対称的な式だとどの文字にするか迷ってしまうかもしれませんが、どれでもいいんです。1文字選んでそれに注目することが重要です。

例)a{(b-a)}^2+b{(c-a)}^2+c{(a-b)}^2+8abc

       =a{(b-a)}^2+b(c^2-2ac+a^2)+c(a^2-2ab+b^2)+8abc

  *文字aを含むところを適宜展開しました。

       =(b+c)a^2+\{{(b-c)}^2+4bc\}a+(bc^2+b^2c)

       =(b+c)a^2+(b^2-2bc+c^2+4bc)a+bc(b+c)

       =\underline{(b+c)}a^2+{\underline{(b+c)}}^2a+bc\underline{(b+c)}

      *共通因数(b+c)でくくります。

       =\underline{(b+c)}\{a^2+(b+c)a+bc\}

       =(b+c)(a+b)(a+c)

       =(a+b)(b+c)(c+a)

 

 このように、1文字選んでしまえばごちゃごちゃせずに解くことができますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

5)実際の入試問題

 それではこれまでの説明を踏まえて、実際の入試問題を解いてみましょう。

最初は自分でやってみてから解答を参考にしてみてください。

 

問題)a^4+b^4+c^4-2a^2b^2-2a^2c^2-2b^2c^2

 

 

それでは解答を書いていきたいと思います。解答の後に解説していきます。

a^4+b^4+c^4-2a^2b^2-2a^2c^2-2b^2c^2

=a^4-2(b^2+c^2)+b^4+c^4-2b^2c^2

=a^4-2(b^2+c^2)a^2+{(b^2+c^2)}^2-4b^2c^2

={\{a^2-(b^2+c^2)\}}^2-{(2bc)}^2

=\{a^2-(b^2+c^2)-2bc\}\{a^2-(b^2+c^2)+2bc\}

=\{a^2-(b^2+2bc+c^2)\}\{a^2-(b^2-2bc+c^2)\}

=\{a^2-{(b+c)}^2\}\{a^2-{(b-c)}^2\}

=(a-b-c)(a+b+c)(a-b+c)(a+b-c){\cdots}

横浜市立大学2011

 

どうでしたか?できていましたか?

できなかった人のために解説していきます。

 

 まず、問題は対称性のある式ですのでaについての降べきの順に並べてやっていきたいと思います。

a^4+b^4+c^4-2a^2b^2-2a^2c^2-2b^2c^2aについて並べると

=a^4-2(b^2+c^2)+b^4+c^4-2b^2c^2となります。

 

ここからが問題です。

因数分解できるじゃん!っと思って

a^4-2(b^2+c^2)a^2+{(b^2-c^2)}^2としてしまうとこれ以上何もできなくなってしまいます。

 では、どう考えればいいかと言いますと、この式をよく見てみてください。\underline{{(b^2-c^2)}^2}\underline{{(b^2+c^2)}^2}だったら{(x+y)}^2の形に因数分解できますよね?

 では{(b^2+c^2)}^2なるようにしていきましょう!

 式全体に\underline{+2b^2c^2}を足して最後で\underline{-2b^2c^2}を引いて調節します。

すると、こうなります。

 

=a^4-2(b^2+c^2)+b^4\underline{+2b^2c^2}+c^4-2b^2c^2\underline{-2b^2c^2}

これを整理すると、

 

=\underline{a^4-2(b^2+c^2)a^2+{(b^2+c^2)}^2}-4b^2c^2

 

上記の式の下線部は{(x-y)}^2の形に因数分解できますね。また、4b^2c^2{(2bc)}^2の形にできますのでやっていきましょう。

 

={\{a^2-(b^2+c^2)\}}^2-{(2bc)}^2      

これは x^2-y^2の形ですね。さらに因数分解していきます。

 

=\{a^2-\underline{(b^2+c^2)-2bc}\}\{a^2-\underline{(b^2+c^2)+2bc}\}

 

上の式の下線部の部分を-でくくります。

 

=\{a^2-(b^2+2bc+c^2)\}\{a^2-(b^2-2bc+c^2)\}

すると、また{(x+y)}^2{(x-y)}^2の形で因数分解できますね。やっていきましょう。

 因数分解するとこうなります。

 

=\{a^2-{(b+c)}^2\}\{a^2-{(b-c)}^2\}  

また、 x^2-y^2の形が出てきましたね(笑)

 

もう一度 x^2-y^2因数分解すると答えが出てきます。

 

=(a-b-c)(a+b+c)(a-b+c)(a+b-c){\cdots}

 

 どうでしょうか。理解できましたか?

 私はいつもこんな感じで考えて因数分解の問題を解いていますので、しっかりと押さえればある程度の問題は解けるようになると思います。

 

 

 今回は前回に引き続き 因数分解についてお話ししていきました。今回の記事を読んでもらうことにより、以前は解けなかった問題も少しは解けるようになっていると思います。#9も合わせて因数分解の話を読んで、少しでも多くの問題が解けるようになってもらえると嬉しいです。