医学生Gの数学ノート

スキマ時間で読める数学の記事を数学塾講師経験のあるメンバーがお届けします!

#17 三角関数 公式のレシピ

 「三角関数の単元、公式どんだけあるんだよ。勘弁してくれ!」

という悲嘆の叫びを最近耳にしましたので、今回はそんな方に向けた記事です。

三角関数はどうしても、アルファベットと数字が混在するイカつい感じになりがちです。そんなイメージに圧倒されて挫折しそうになるかもしれませんが一個一個丁寧に確認していけば大丈夫!自分のペースで読み進めてください。

 

公式を覚えるのが苦手って人は一度自分で公式を作ってみると意外と覚えられたりするものですよ。今回は#14#15で説明した加法定理から三角関数の公式をたくさん導いていきたいと思いますので、ぜひ参考にして公式を確認してみてください。

というか、いくつも公式覚えるのは苦手!という人はこの記事を通して各公式の導出のしかたを学んでください。覚えられないのなら、自分で作ればいいのです! 笑

 

それではゆるりとやっていきましょう!

 

 

1)加法定理

 #14,15の復習です。

\sin(α+β)=\sinα\cosβ+\cosα\sinβ\cdots①

\sin(α-β)=\sinα\cosβ-\cosα\sinβ\cdots②

\cos(α+β)=\cosα\cosβ-\sinα\sinβ\cdots③

\cos(α-β)=\cosα\cosβ+\sinα\sinβ\cdots④

\displaystyle\tan(α+β)=\frac{\tanα+\tanβ}{1-\tanα\tanβ}\cdots⑤

\displaystyle\tan(α-β)=\frac{\tanα-\tanβ}{1+\tanα\tanβ}\cdots⑥

 

 

 

2)2倍角の公式

 2倍角の公式、こちらになります

 \sin2α=2\sinα\cosα

\cos2α=cos^2α-\sin^2α

            =2\cos^2α-1

            =1-2\sin^2α

\tan2α=\displaystyle\frac{2\tanα}{1-tan^2α}

 

 では、この2倍角の公式がどのように作られたかわかりますか?

 なんと簡単、2倍角の公式は1)の①、③、⑤のβをαにしただけです。

 

\sin(α+β)=\sinα\cosβ+\cosα\sinβ\cdots①

\cos(α+β)=\cosα\cosβ-\sinα\sinβ\cdots③

\displaystyle\tan(α+β)=\frac{\tanα+\tanβ}{1-\tanα\tanβ}\cdots⑤

 

β=αより

 

①を式変形して

\sin(α+α)=\sinα\cosα+\cosα\sinα

\sin2α=2\sinα\cosα

 

③を変形すると

\cos(α+α)=\cosα\cosα-\sinα\sinα

\cos2α=cos^2α-\sin^2α

 

 ここで、\underline{\sin^2α+\cos^2α=1}を利用すると、cosのみ、もしくはsin

のみであらわすことができますね。

cosのみで表すと\sin^2α=1-\cos^2αより

\cos2α=2\cos^2α-1

 

sinのみで表すと\cos^2α=1-\sin^2αより

\cos2α=1-2\sin^2α

 

⑤を変形すると

\displaystyle\tan(α+α)=\frac{\tanα+\tanα}{1-\tanα\tanα}

\tan2α=\displaystyle\frac{2\tanα}{1-tan^2α}

 

 こんな感じで簡単に作れましたね。加法定理さえ覚えておけば2倍角も簡単に作れちゃいます。私も忘れてしまった時は作ってた気がします(笑)。

 

2倍角はこれでおしまいです。まだまだ公式はたくさんありますのでどんどん見ていきましょう。

 

 

 

3)半角の公式

 半角の公式は先ほど求めた2倍角の公式を用いて導きます。まず、半角の公式の復習から行って見ましょう。

 

\displaystyle\cos^2\frac{α}{2}=\frac{1+\cosα}{2}

\displaystyle\sin^2\frac{α}{2}=\frac{1-\cosα}{2}

\displaystyle\tan^2\frac{α}{2}=\frac{1-\cosα}{1+\cosα}

 

 では、ここから半角の公式にしていきましょう。

まず、2倍角の公式の\cos2α=2\cos^2α-1\cos2α=1-2\sin^2αを変形させて、\cos^2α\sin^2αを求めます。

 

すると、

\displaystyle\cos^2α=\frac{1+\cos2α}{2}

\displaystyle\sin^2α=\frac{1-\cos2α}{2}

*ちなみにこの2つも重要な形の一つですので覚えておきましょう。

 

ここまで変形できたらあとはαを\frac{\theta}{2}に変えるだけです。

(αには消えてもらって、その倍の角度のθを用いた表記にチェンジします。)

 

\displaystyle\cos^2\frac{\theta}{2}=\frac{1+\cos(2×\frac{\theta}{2})}{2}

\displaystyle\sin^2\frac{\theta}{2}=\frac{1-\cos(2×\frac{\theta}{2})}{2}

 

計算して整理します

 

\displaystyle\cos^2\frac{\theta}{2}=\frac{1+\cos\theta}{2}

\displaystyle\sin^2\frac{\theta}{2}=\frac{1-\cos\theta}{2}

 

はい、おなじみのやつが出てきました!

 

 ちなみに\displaystyle\tan^2\frac{\theta}{2}\displaystyle\tan^2α=\frac{\sin^2α}{\cos^2α}のαを\frac{\theta}{2}に変えるだけです。

 

 \displaystyle\tan^2\frac{\theta}{2}=\frac{\sin^2\frac{\theta}{2}}{\cos^2\frac{\theta}{2}}

                \displaystyle=\frac{\frac{1-\cos\theta}{2}}{\frac{1+\cos\theta}{2}}

 

ここで分母分子を2倍すると

 

\displaystyle\tan^2\frac{\theta}{2}=\frac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta}

 

これで半角の公式の導き方は終わりです。

 

 

 

4)3倍角の公式

  ついに3倍角まできました!

 3倍角の公式は1)の①③⑤のβに2αを代入して計算するだけです。まぁ、毎回計算して導出するのはさすがに面倒ですのでこれはもう覚えてもいいと思います。

 

それではやっていきましょう。

\sin(α+2α)

=\sinα\cos2α+\cosα\sin2α

ここで、\cos2α=1-2\sin^2α\sin2α=2\sinα\cosαを代入して計算します。

=\sinα(1-2\sin^2α)+\cosα(2\sinα\cosα)

=\sinα-2\sin^3α+2\sinα\cos^2α

=\sinα-2\sin^3α+2\sinα(1-\sin^2α)

=\sinα-2\sin^3α+2\sinα-2\sin^3α

=3\sinα-4\sin^3α

 

\underline{\sin3α=3\sinα-4\sin^3α}

 

cos3αも同様に計算すると求めることができます。

\displaystyle\underline{\cos3α=4cos^3α-3\cosα}

 

 

 

5)積和、和積の公式

  積和と和積は結構微分積分の分野で使う機会が多いような気がしますので、しっかりマスターしたいところです。

これは加法定理を足したり引いたりして2で割るだけで作れますので試験中に忘れてしまっても簡単に作れちゃいます。

 

①+②より

\sinα\cosβ=\frac{1}{2}\{\sin(α+β)+\sin(α-β)\}

 

①ー②より

\cosα\sinβ=\frac{1}{2}\{\sin(α+β)-\sin(α-β)\}

 

③+④より

\cosα\cosβ=\frac{1}{2}\{\cos(α+β)+\cos(α-β)\}

 

③ー④より

\sinα\sinβ=-\frac{1}{2}\{\cos(α+β)-\cos(α-β)\}

 

※最後のsinαsinβはマイナスを付け忘れないようにしましょう!

 これで積和は終わりです。次に和積も出していきます。

 

 ここで、α+β=A、α-β=Bとすると、

α=\frac{A+B}{2}β=\frac{A-B}{2}となります。

(α+β=Aとα-β=Bの両辺を足したり引いたりしてみてください。)

 

これを上の積和の公式に代入して両辺を2倍すると完成します。

 

\displaystyle\sin A+\sin B=2\sin\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2}

\displaystyle\sin A-\sin B=2\cos\frac{A+B}{2}\sin\frac{A-B}{2}

\displaystyle\cos A+\cos B=2\cos\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2}

\displaystyle\cos A-\cos B=-2\sin\frac{A+B}{2}\sin\frac{A-B}{2}

 

※最後のcosA-cosBはマイナスを付け忘れないようにしましょう!

 

これで積和もおしまいになります。

 

 

 

 今回は三角関数の公式についてまとめて見ました。半角の公式や積和の公式は三角関数の次数を下げることができますので、三角関数がからむ積分で大活躍します。今回の記事の内容をマスターしていれば、角度がからむ図形の問題や数Ⅲの複素数平面、積分、時には物理の波の問題など、様々な場面で三角関数を用いて解けるようになります。ぜひぜひ、読み込んで、自力で導出できるようにトレーニングしてくださいね。